先日、縁あって某大学で開かれている判例研究会を見学する機会を得た。
その時に取り扱われたのはフランス民法典(の、特に資産概念を軸とした財産法や契約法の諸問題)で、単に事案と判旨を要約するものではなく、第一審からの判決全文、関連する学説・判例、そして比較法の観点までを網羅した詳細な分析に基づいていた。報告の中心は、その判決をどう評価すべきかという「評釈」にあり、判決の論理構成における曖昧な点を指摘し、その射程について新たな解釈を提示するものであった。
質疑応答では、様々な立場の研究者から多角的な検討が加えられた。指導的立場の教授からは、判例の歴史的文脈における位置づけが問われ、中堅の研究者からは、報告の基礎となっている理論的枠組みそのものへの鋭い指摘がなされた。他の参加者からも、先行する評釈との関係や、判決が射程外とした領域への影響について質問が相次いだ。中には私が思いつかなかった領域も含まれており面白かった。
思うにこの研究会の特殊性は、実務における判例の読解とは異なる基準で議論が進行する点にあるように思われる。実務では、判例は特定の事案解決における有利不利という観点から分析されることが多いが、ここではそうした功利的な評価が保留され、純粋に法理論としての整合性、従来の判例体系との関係、そして判決が社会に与える影響といった観点から、内在的な批判が試みられている。(伺うと、こうした形式が伝統とされているとのことだった。)
学説の知的検証の流れは公になることがないため、徹底的に吟味される過程を観察できたことはとても嬉しい。